18.5.22【お知らせ】ダイヤモンド・ザイ・オンライン記事 ふるさと納税おすすめ品「干物」

ダイヤモンド・ザイ・オンラインにて連載中の専門家が選ぶふるさと納税おすすめ返礼品シリーズにて、ながさきが「干物」を紹介しています。

↓こちらからお読み下さい。

「ふるさと納税」で「干物」がもらえる返礼品から、魚介類のプロが「本当においしい干物」を4つ厳選!魚の専門家おすすめの「最高の干物」を堪能しよう!

 

 

 

18.5.22 メニュー名や解説が長い飲食店の魚は割高である事を知っておこう ~魚が美味しいお店の見分け方 第14回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第14回 メニュー名や解説が長い飲食店の魚は割高である事を知っておこう

【理由】そのコストを日々の仕入れに掛けたほうが魚は美味くなる

 

  • こういう定番メニューがあったら要注意

魚に限った話ではないですが、定番メニューでやたらと長い名前のメニューというものを見かけます。例えば、「新鮮!銀ダラの西京みそ仕立て ししとうを添えて」「本場の味!獲れたて魚介と旬の野菜の濃厚アクアパッツァ」のような感じのメニューです。また、短いメニュー名であっても、昨今のトレーサビリティへの意識の高まりや売り方の変化で「どういう人がどのようにして獲った魚で・・・」といったことや「〇〇という魚は、別名~とも言われ・・・」といったように長い解説が載っている場合があります。

このようなメニュー表記は、豊富な文字情報から食卓に上るメニューのイメージを詳細に描きやすくするため、一見丁寧で親切なようにも思えます。しかし、このような定番メニューを作成するにはある程度のコストが掛かります。そこに掛けられるコストは、日々の素材の仕入れに回らなくなるか、価格そのものに少なからず上乗せされますから、結果的に割高なものが出てくる可能性が高くなってきます。

 

  • メニュー名や解説に力を注ぐ意図

飲食店がメニュー名や解説に力入れている場合、その意図はなんでしょうか。

例えば、単に「銀ダラの西京焼き」だけだと、どのような銀ダラの西京焼きが出てくるかイメージができません。それを「新鮮!銀ダラの西京みそ仕立て ししとうを添えて」とします。すると、まず、頼む側に「ししとうが添えられているんだな」と料理のイメージより鮮明に持ってもらえるようになります。また、銀ダラの「新鮮」というセールスポイントを頼む側にアピールすることができます。

さらに、ここに「銀ダラは、どういう魚で、どこで獲れたものをどのように処理し・・・」といった解説を加えることで、頼む側に安心感を与えることができます。

細かな意図は様々ですが、長い名前のメニューや解説文は、頼み側に安心感を与え、頼みやすくさせる効果があり、それらを意図している場合が多いと思います。

  • 魚の場合、その労力には無駄が多い

しかし、これらの長いメニューや解説文には弊害もあります。

まず、使う素材が限定されてしまう可能性が高く、広い選択肢からその日のベストな素材を選べなくなります。また、一生懸命メニューの詳細や料理の解説を伝える定番メニューを作っても、変化が激しい魚の場合、品質や使う素材やメニューそのものが変わってしまう恐れがあるのです。

先ほどの銀ダラの例ですと、当初手に入っていた新鮮な銀ダラが手に入らなくなるかもしれません。また、「どこで獲れたものをどのように処理し・・・」と一生懸命解説文を作っても、その状態をどのくらい続けられるか定かではないのです。

 

  • 魚を知る飲食店は見せ方よりも日々の魚と向き合っている

以上のように、よりよいメニュー名や解説文の作成は、そのメニューが当分の間変わらないという前提がある中でコストを掛ける価値が出てきます。しかし、品質が変化しやすい魚の場合、そこにコストを掛けるのは効率的とは言えません。

これも繰り返しになりますが、魚を知る飲食店の場合、メニューはなるべくシンプルにし、日々使える素材の選択肢を広くすることで、よりベストな魚を選べるようにしています。さらには、定番メニューそのものが入荷状況等で変わってしまう恐れがありますから、そこにあまり労力は割かないのです。

長いメニュー名や解説文は食べる側の脳を刺激し、より楽しく食事ができるようになる部分もあるかもしれません。しかし、定番メニューの場合には注意が必要です。

 


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■「本日の獲れたて鮮魚」がある店には注意しよう
■魚のアラや頭を使ったメニューがあるお店を選ぼう
■水・日・祝に干物を勧めるお店を選ぼう
■生け簀に魚が泳いでいるお店はやめておこう
■イカ一夜干しにタレがかかっている店には注意しよう

…などなど今日から役立つ知識が満載!

18.5.11 「ジューシーホッケの炙り」があるお店には注意しよう ~魚が美味しいお店の見分け方 第13回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第13回 「ジューシーホッケの炙り」があるお店には注意しよう

【理由】干物や加工品といえど、品質が変わりやすいのが魚という食材

  • 「ジューシーホッケの炙り」は本当にいつもジューシーなのか

定番メニューで「ジューシーホッケの炙り」といった様なものを見かけます。この他にも「プリプリえびのフライ」といったように、妙な擬態語、擬音語などの形容詞が付いているメニューには要注意です。「ジューシーホッケの炙り」であれば、「ホッケの干物」と書いてもよいのです。「どのようにメニューを書けば、お客様により頼んでもらえるか」と飲食店側は努力しています。それ自体は特に悪いこととは思いませんが、では「そのホッケは本当にいつもジューシーなのか」ということを疑問に思ってしまいます。

 

  • 干物や加工品なら品質はいつも一定なのか

生の魚と比べて、干物などの加工品は品質のバラつきが少なくなります。これは、同じ原料を使い、ある程度の量を生産すること、加工することで品質が変わりにくくなること、冷凍など品質を保つ流通が容易になること、などに起因します。ですので、加工品は生の魚と比べると、いつでも置いておかなければならない「定番メニュー」に向いています。

例えば、ホッケの干物の場合、原料の産地は主にロシアやアメリカ、北海道などです。一般的には、凍結された原料をまとめて仕入れ、解凍して、処理し、乾燥機に掛け、また凍結して保存します。このようにするので、比較的安定供給でき、日々品質が変わることはなくなります。

しかし、ホッケはすべて漁獲によるものですから、それぞれの産地で獲れたり獲れなかったりします。そうすると原料の価格が動きます。数ヶ月前まで北海道産の原料を使っていたのが、不漁で価格が上がり、使う原料を見なおさざるを得ない、というようなことは水産加工の世界では珍しくありません。それでも同じ原料を使うなら今度は売値が上がります。数ヶ月前まで飲食店に1尾280円で卸していたものが350円になる、といった具合です。そうすると今度は、飲食店側が仕入れる商品を見直さないと採算が合わなくなる、このような事が裏では起きているのです。

 

  • 店側としてはやはり美味しそうに見せたい。でも・・・

以上のように、いくら加工品でも、数ヶ月単位で見れば品質が変わってくる可能性が十分にあります。「ホッケの干物」は年中出せるかもしれませんが、「ジューシーホッケの炙り」は年中出せるか分からないのです。もちろん、メニューを作った当初は、ジューシーなホッケを選んでいたはずです。しかし、それと同じホッケが年中出せるとは限らないのです。

このあたりの事情を分かっている飲食店の場合、定番メニューは「ホッケの干物」などとシンプルに書かれています。「ジューシーホッケの炙り」と「ホッケの干物」では、ジューシーなホッケが出てくる確率はさほど変わりません。

 

  • 定番メニューの形容詞には注意

このように、定番メニューに品質を連想させる形容詞が付いていた場合は要注意です。この他の例としては、「脂の乗った~」「まろやか仕立ての~」「シャキシャキ食感の~」などが挙げられます。魚は極めて品質が変わりやすい食材ですので、メニューを作った当初から品質が変わっている可能性があります。このような形容詞が付いていたからといって期待するのは止めましょう。


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18.5.10 「ノドグロ」が毎日ある飲食店で「ノドグロ」を頼むのは止めよう ~魚が美味しいお店の見分け方 第12回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第12回 「ノドグロ」が毎日ある飲食店で「ノドグロ」を頼むのは止めよう

【理由】様々な「ノドグロ」があり、美味しい「ノドグロ」は常にあるわけではない

 

  • すっかり高級魚となった「ノドグロ」

「ノドグロ」というと、すっかり高級魚として定着したなという印象があります。「白身のトロ」と言われ、生でも、煮ても、焼いても、何をしても美味い魚の超優等生です。新潟で漁業をしていた私の実家では様々な魚が獲れましたが、その中でも総合的に最も美味しい魚はこの「ノドグロ」だと思います。

というと、食べてみたいと思われるかもしれません。ただ、「ノドグロ」も定番メニューであった場合には注意してください。

 

  • 「ノドグロ」と言っても品質は様々

まず、「ノドグロ」が何かというと、正式和名が「アカムツ」という名の魚の通称です。口を開けると喉が黒いので「ノドグロ」と呼ばれます。昔は知る人ぞ知る魚でしたが、昨今、マスメディアで扱われる事も多く、すっかり有名になりました。白身の上品な味わいと、トロを思わせる脂を兼ね備えた超高級魚です。

ここでも注意いただきたいのは、「ノドグロ」と言っても様々な品質のものがあるということです。なぜならば、「アカムツ」という魚でありさえすれば、「ノドグロ」と名乗れてしまうのです。「ノドグロ」と言ってもピンキリなのです。

まず、意外と知られていませんが、旬は秋〜冬です。養殖の「ノドグロ」は、流通しておらず、季節によって味が大きく変わる魚の1つと言えます。

それから、大きさの違いで味が変わりやすい魚で、小さいサイズの「ノドグロ」だと、脂・うま味などの点で欠け、値段も下がります。

また、産地によっても味が変わってきます。「ノドグロ」は主に日本海で獲れますが、西日本と東日本では若干味が異なります。また、韓国産のノドグロも流通しており、価格も安く国産の「ノドグロ」とは味が異なります。

さらには、流通状態が大きく響きます。まず、特殊な方法を取らない限り、冷凍による味の落ちが大きい魚です。また、獲れたてよりは少し置いた方が美味しいと私は思います。

このように、「ノドグロ」と言っても品質は様々で、高級魚を連想させる味わいの「ノドグロ」を常に定番メニューとして置くのは、大変難しいことなのです。

 

  • 定番メニューに「ノドグロ」をおく飲食店の意図

定番メニューに「ノドグロ」があった場合は、間違いなく冷凍モノであり、ベストな状態からすると確実に味が落ちます。わざわざ「ノドグロ」を置かなくても違う魚でいいじゃないかと思いますが、やはり「ノドグロ」という言葉の印象が良いからなのかなと思ってしまします。

 

  • 美味しい「ノドグロ」を食べたいなら

このような形でベストな状態でない「ノドグロ」が蔓延ってしまうと、「ノドグロ」という魚の味が誤って認識されてしまうのではないかと懸念してしまいます。美味しい「ノドグロ」を食べるなら、まず秋冬、そして、25センチは超える程度のある程度の大きさのものを食べるようにするとよいと思います。


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18.5.8 毎日ある「関さば」には、注意しよう ~魚が美味しいお店の見分け方 第11回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第11回 毎日ある「関さば」には、注意しよう

 

【理由】「関さば」であっても、いい時と悪い時がある

 

  • 一度は食べてみたい「関さば」だけれど

魚のブランドといえば、「関さば」が有名です。同じサバでも通常のサバの10倍以上の値段が付くこともあるくらいの高級サバで、一度は食べてみたいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時に、飲食店に入って定番メニューに「関さば」があったら思わず頼んでしまうかもしれません。ただ、一旦、落ち着いて考えてみましょう。

 

  • 「関さば」とは

まず、「関さば」とは何かというと、大分県漁協が管理するサバのブランドです。2006年に文字での商標登録もされましたので、このブランド名は業務上勝手に使うことができません。

では、「関さば」を名乗れるのはどんなサバかと言うと、大分県の佐賀関産のサバである事が第一条件となります。さらに、「一本釣りで漁獲されたもの(一本釣りは他の漁法と比べて魚が痛みにくい)」かつ「面(つら)買いであること(生きたままセリ落とすこと)」といった漁協が定める条件を満たすサバにのみ付けられることとなっています。そのため、「関さば」と付くサバは出荷時点で極めて高鮮度で状態がよく、普通のサバでは難しい生食が推奨される特別なサバの地位を確立しているのです。

 

  • こんな「関さば」も「関さば」と呼べてしまう

ここまでの話だと、「やっぱり「関さば」は美味しいに決まっている」と思うかもしれませんが、いつでもある定番メニューの場合は注意が必要です。

まず、他の箇所でも述べているように魚は供給や品質が極めて不安定ですので、今日お店に置いている「関さば」がどのくらいの品質のものであるのかは定かではありません。100点のときもあれば、50点のときもあるのです。極端な話、条件を満たしさえすれば、流通経路で雑な扱いをされても「関さば」を名乗れてしまうのです。

もっと分かりやすい話では「関さば」にも旬があり、秋が最も美味しいとされています。しかし、春でも「関さば」なのです。美味しくないとまでは言いませんが、秋の「関さば」と品質が異なってくる点は間違いないと思います。

さらには、「関さば」を使うにあたり、向く場合と向かない場合があります。まず、刺身は向いています。しかし、非常に身が締まっているサバなので、塩焼きとした場合、脂っこいサバが好きな人にとっては「それほどでも」となってしまうでしょう。

 

  • 美味しい「関さば」を食べるには

 以上のように、「関さば」であっても、いい時と悪い時があるということを心得ておいてください。ちなみに、ここまでをまとめると、美味しい「関さば」を食べるには、①季節は秋、②食べ方は刺身や寿司など生食、という点を守ることをオススメします。そして、今日の「関さば」の状態はどうか、注文される前に店員さんに聞いてみましょう。そして、出来れば、現地まで行って食べるのが一番よいです。


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18.5.7 「産地直送」を謳っている魚にも期待し過ぎないでおこう ~魚が美味しいお店の見分け方 第10回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第10回 「産地直送」を謳っている魚にも期待し過ぎないでおこう

 【理由】届くまでの物流ルートは他のものとほぼ変わりない

●「産地直送」だから美味しいと思わないで
定番メニューで「産地直送」という文字を見る場合があり、そういう枠でカテゴリ化されている場合も見受けられます。「産地直送」というと「産地からすぐ届いて新鮮そうで美味しそう!」というイメージを持たれるかもしれないのですが、まずは冷静に考えてみてください。「産地直送」って何?と。

●「産地直送」の定義
まず、「産地直送」の言葉の定義ですが、明確に定まっている訳ではありません。ただ、一般的には、産地の生産者と直接取引した物を指すことが多いです。ここで着目して欲しいのは「取引」という言葉です。「取引」とは商用上の手続きのことです。つまりは、産地の生産者と話をして「これをいくらでちょうだい。」「わかったよ。送るね」というやり取りをすることです。

●宣伝文句でしかない「産地直送」
では、物流はどうかというと、宅配便や市場便など、結局通常の流通と同じルートを辿ることとなります。例えば、長崎から東京まで直送と言っても、結局は長崎で集荷をされてトラックなどで東京に着き、物流センターや市場などで小分けにされてそれぞれのお店に届くというルートです。これは、直接生産者と取引をせず、中間業者と取引をした場合と同じルートです。確かに、確実に途中で止まることなく荷物が流れるという意味はあるかもしれませんが、産地直送以外の場合も同様に止まることなく荷物が流れる場合も珍しくはありません。
もう一点「産地直送」の意義としては、中間業者に取られるマージンを削減して安く仕入れられるという点が上げられます。しかし、中間業者に出す時の値段と直接取引する時の値段を変えることは普通にできます。さらに、宅配便を使えば市場流通と比較して物流コストが高くなり、その分仕入れコストが上乗せされます。要するに、中間マージンは削減されても、トータルの仕入れコストが削減されるかは分からないのです。
さらに言うと、「産地直送」には弊害もあります。それは、消費地の中間業者の目利きが省かれてしまうことです。一時期、物流から中間業者を省く「仲抜き」という言葉が流行りましたが、最近では逆に中間業者が持つ目利き機能が見直されてきています。産地の生産者は、生産のプロであっても、よりよい魚を選ぶ目利きのプロではないのです。さらには、どのような魚を好むかは日本においては本当に地域それぞれです。生産者は自分のところで好まれる魚がよいと思って、魚を選び出荷しがちですが、消費地では好まれなく全然売れないということが起こりがちです。

では、「産地直送」を謳う意味は何か。市場流通外も含めた広い選択肢から選べるという意味はあるかもしれません。ただ、お店がそれを謳う場合、もうこれは「何となくいいイメージにあやかれる」という事以外にないのではないでしょうか。平たく言うと「産地直送」は、宣伝文句でしかないように思います。その言葉に価値を感じてお金を払うのは個人の自由です。ただ、美味しい魚が食べたいだけであれば、「産地直送」かどうかは関係がないことです。

●やはりいる「産地直送」が好きな一部の人たち
やはりいるのが「産地直送」という言葉が好きな方々です。しかし、ここまで述べたように「産地直送」であるかどうかは、魚が美味しいかどうかとは関係がありません。それは宣伝文句でしかないので、「産地直送」という言葉に捕らわれず、目の前にある魚そのものが美味しい状態なのかどうかを見るようにするとよいと思います。


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18.5.6 産地の表記がある魚に期待しないようにしよう ~魚が美味しいお店の見分け方 第9回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第9回 産地の表記がある魚に期待しないようにしよう

【理由】いつも出す魚の産地を絞ると状態の悪い魚が出るリスクが高まる

 

  • 「〇〇産」だからきっと美味しいに違いないと思っていると

定番メニューに「〇〇産」や「〇〇漁港直送!」のような文言を見る場合があります。トレーサビリティが行き届いていて安心で、さぞかし美味しそうな気もしてきます。しかし、そのように思って貰えることを店側は狙っています。ただ、日替わりメニューは別として、定番メニューで産地を限定するのには大きな弊害も生じてきます。

 

  • 「〇〇産」と定番メニューに書くことによる弊害

定番メニューは、いつもあるメニューです。ということは、いつも出せるようにしておかなければなりません。その定番メニューに〇〇産と書いてしまうと、いつも〇〇産に限定して素材を選ばなければならなくなります。悪天候で〇〇産の魚の入荷がないなど、その日の品質が悪い時でもです。

極端な例ですが、定番メニューに「大間産マグロの刺身」があったとしましょう。一見すると、「あの有名な大間のマグロか。美味しそう!」と思われるかもしれません。しかし、今日の大間のマグロがベストな状態なのかは不明です。

別の箇所でも述べているように、魚という食材はその入荷状況や品質が極めて不安定です。例え大間産のマグロであっても100点のときもあれば50点のときもあるのです。これがその日その日で産地ごとに異なっていると思って下さい。「今日は、大間産100点、和歌山産70点」という日もあれば、「大間産50点、和歌山産90点」という日もあるのです。

定番メニューで産地を限定すると、マグロの品質がその産地の品質に依存してしまいます。先ほどの例では、例え和歌山産のマグロの方が、品質が良かったとしても、大間産のマグロを出さなければなりません。

このような事を理解している飲食店は、定番メニューではなるべくメニューを限定的に書かず、広い選択肢の中からその日の素材を選べるようにしています。そうすることで、その日その日でベストな魚を提供できるようにしているのです。定番メニューを〇〇産と限定するという事は、それができないという事です。

 

  • 「〇〇産」と書きたい意図

以上のように、定番メニューに「〇〇産」と書くと弊害もあるのに、なぜ書くのでしょうか。それは、メリットの方が大きいと考えているからだと思います。「〇〇産」と書くメリットの1つは、平たく言うと「トレーサビリティが行き届いていて安心で、さぞかし美味しそうなイメージを与えられる」という事です。

あるいは、「日々変わる魚の品質に目を向けなくとも、〇〇産の品質に頼っていれば大丈夫だろう」という考えの表れの様に思います。確かに冷凍魚や加工品など比較的安定的に供給される水産物もあるので、それでよい場合もありますが、長い目で見れば品質は変わってくるので、弊害はゼロではないです。

 

  • やたらと産地を語りたがる一部の人たち

「本」や「天然」の場合と同様にこれに関しても、やたらと「〇〇産」を語りたがる一部の方々がいらっしゃいます。しかし、いくら産地のブランドイメージがよくても、流通や調理方法が良くないと、口に入る段階で、魚の品質は悪いものとなってしまします。消費者としては、「獲れた段階の品質はどうなのか」ではなく、「口に入れる段階の品質はどうなのか」が重要なはずです。「〇〇産」という言葉でなく、出てきた魚の品質そのものに向きあうようにすると良いと思います。


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18.5.4 「活」を謳っている魚には期待しないでおこう ~魚が美味しいお店の見分け方 第8回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第8回 「活」を謳っている魚には期待しないでおこう

【理由】「活」の状態が美味しいとは限らず、品質が誇張されている場合も

 

  • いかにも新鮮そうな「活」

定番メニューでも「活アジ」や「活ハマチ」のように、「活」という表記を見ることがあります。いかにも新鮮そうで、思わず頼みたくなってしまうかもしれませんが、一回落ち着いて下さい。まず、「活」の意味とは何なのでしょうか。そして、「活」がつく魚は、本当に美味しいのでしょうか。

 

  • 「活」とは

何となく新鮮な感じがする「活」ですが、まず、「イキ」「イケ」「カツ」などと読みます。この「活」の定義は、きちんと存在するわけではありませんが、「活魚(かつぎょ)」の状態で流通するものに付ける場合が一般的だと思います。

「活魚」とは生きたまま流通する魚たちです。分かりやすく言うと、お店の生け簀に入れられている魚たちがそうです。そうでなくても、お店まで生きたまま運ばれてきた魚を活魚と呼んでいるケースは見られます。また、「活」とは別に、魚を血抜きするなど、特殊な処理をした場合の「活〆(イキジメ、イケジメ、カツジメ)」という言葉もあり、この「活〆」も「活魚」に含むとしている場合もあります。

この「活魚」に対して、死後に生のまま流通する魚を「鮮魚」、凍結して流通する魚を「冷凍魚」、塩漬けにされた魚を「塩魚」と一般的には呼び、「活魚」とは区別されます。

この「活」の表記についても、ルールが定められている訳ではないので、付けるか付かないかは事業者次第です。仮に活魚のアジであっても「活アジ」と表記する必要はなく、単に「アジ」と表記しても良い事になります。

 

  • 「活」をつける意図

さて、やたらと「活」の文字が定番メニューで目立つ飲食店を見ることがありますが、必要のない「活」という表記をわざわざする意図は何なのでしょうか。

1つは、「活魚」と「活魚でない魚」の2種類のメニューがあり、単純に区別をする意図があります。例えば、生け簀にアジが泳いではいるが、そうでないアジもメニューにある場合です。生け簀のアジを指す場合は「活アジ」、そうでない方は単に「アジ」となります。このケースは、特に問題ないでしょう。

もう1つは、「活」という言葉が持つ価値にあやかりたいケースです。

ただし、これには弊害もあって、定番メニューで「活」を謳うと使える素材が「活魚」のみとなり、選択肢が狭まることになります。「活」を謳わなければ、「活魚」を含むあらゆる状態の魚から最も良い素材選んで提供することができるのです。

 

  • 「活魚」ってそもそも美味しいのか

「活魚」には、良い面と悪い面があり絶対的に美味しいとは言えません。例えば、狭い水槽で泳ぐことでストレスが溜まって味が損なわれることが言われています。また、魚種によっては、熟成が進んだ方が市民の口に合う味に仕上がる場合もあります。

ただ、鮮度がよく臭みが少なめで食感がよいので、活魚の方が向く料理や活魚が好まれる食文化の地域というものはあります。「活魚」は状況に応じて使うのがよいのです。

それでも定番メニューに「活〇〇」を書くということは、味よりも見栄えやパフォーマンスを重視したいのかなというように受け取れてしまいます。「活」がつく魚に期待しすぎるのは止めましょう。

 

 


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18.5.1 「本ズワイガニ」には期待しないでおこう ~魚が美味しいお店の見分け方 第7回~

五種盛りより三種盛りを頼め 外食で美味しくて安全な魚を食べる方法」にも書かれている魚が美味しいお店の見分け方をこちらでもお伝えしています。

第7回 「本ズワイガニ」には期待しないでおこう

【理由】見栄え重視で品質以上に誇張されている可能性が高い

 

  • 「本ズワイガニ」って一見高級そう

定番メニューで「本ズワイガニ」という言葉を見かけることがあり、魚業界の一部の人の間ではちょっと問題視されています。「本ズワイガニ」というと「本当のズワイガニ?美味しそう。」なイメージがあるかもしれません。ただ、その反応を担当者は狙っています。本表記は間違いではないのですが、いろいろな事情をはらんでいます。

 

  • 広い意味の「ズワイガニ」と狭い意味の「ズワイガニ」

そもそものズワイガニについてですが、タラバガニ、毛ガニと共に「三大ガニ」と呼ばれる事もあるカニで、皆さんもご存知だと思います。タラバガニは身が肉厚、毛ガニはミソが濃厚、ズワイガニはその両方を楽しめると言われます。ちなみに、よく聞く「越前がに」「松葉ガニ」もズワイガニでそれぞれの地域で獲れたズワイガニのブランドです。

ただ、ズワイガニというと種族の異なる「オオズワイガニ」や「ベニズワイガニ」など、その仲間を含めた広い範囲を指す場合も稀にあります。「本ズワイガニ」とは、その仲間たちでなく、「狭い意味での「ズワイガニ」ですよ」ということを言いたいのです。

 

  • 「本ズワイガニ」と表記する意図

「本ズワイガニ」という表記は、単純に種の違いを強調して表す意図で使われる場合もあります。商品に「ズワイガニ」と「オオズワイガニ」があり、その区別を分かりやすくするために「本ズワイガニ」と表記する場合がそうです。

しかし、そのような場合を除いて、通常の流通では「ズワイガニ」は「本」を付けずに単に「ズワイガニ」と呼ばれることが一般的です。それでも「本」をつけるケースは大衆店に多く、高い価値がつく「本ズワイガニ」が持つ価値にあやかりたい意図があるように思います。

ここで、気をつけて欲しいのは「本ズワイガニ」も品質はピンキリだということです。品質が悪く安いズワイガニでも「本ズワイガニ」と謳うことはできます。それだったら、「本ズワイガニ」でなくても同じ値段で美味しい別のカニを食べた方がいいですよね。でも、同じ値段だったら美味しくなくても「本ズワイガニ」を謳える商品の方が売れてしまうのが今の世の中ではないでしょうか。

 

  • やたらと「本」が好きな一部の人たち

このように、魚業界にはやたらと「本」が好きな人たちがいます。こういった商品が蔓延すると『「本」が付かない商品は、ニセモノで美味しくない。』という誤った認識が広まってしまうのではないかと懸念しています。

単に「ズワイガニ」とだけ書いてあれば「本ズワイガニ」でニセモノではない場合が通常です。また、「本ズワイガニ」よりも価値が低いとされる「ベニズワイガニ」でも、良い品質のものは「本ズワイガニ」を謳う商品と比較しても美味しい場合が多々あります。「本」という言葉は単なる宣伝文句であることも多いので注意しましょう。

 


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出版社:秀和システム
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形態:四六判 304ページ

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