18.1.8【コラム】漁師は、なぜ演歌なのか

「五種盛りより三種盛りを頼め」の中で書きましたが、「今ドキの漁師は演歌を聴かない」です。
このことについて、「では、何を聴いているのですか?」という質問を先日いただきました。答えとしては、一般的に皆さんが聴いている音楽とあまり変わらない、となります。

私が書籍にこのようなことを書いたのは、テレビのドキュメンタリー番組などで描かれる漁師像が実際とかけ離れており、色々な漁師がいることを伝えたかったからです。また、難しく言うと、漁師にはステレオタイプが存在すると思っています。

にしても、この「漁師=演歌」というイメージ、なぜついてしまったのでしょうか。それについて、自分なりに考察してみました。

まず、演歌には、元々漁業を扱った歌が一定数存在します。鳥羽一郎さんの「兄弟船」や八代亜紀さんの「舟歌」などがそうですが、これらのキャンペーンや何やらで漁港近くでの興行が盛んな時期がありました。その場で、実際に歌手を目にするとファンになる方が多いと思います。「うちのところによく来てくれた」という思いも生まれるでしょう。そして、ファンになった漁師さんは、演歌を聴くようになる。おそらく、こんなAKBの先駆けともいうべきことが理由となっているように思います。

今はどうかというと、そういった興行がないわけではないですが、以前よりは盛んではないですし、若い人の姿はあまり見られないかな。最近では、漁業の現場の世代交代も進んでいます。それに、漁業を扱う演歌も少なくなってきていると思います。昔の漁業が盛んだった時代は、漁業従事者や漁業に関連する仕事をされている方も多かったと思うので、レコードのセールスを考えるとそういった題材を扱うと売れるという側面もあったのかもしれません。

漁師=演歌はまだ良いのですが、個人的な思いでは、時代にそぐわない漁師のイメージを現代版に改めていくことは必要だと思います。

上に「テレビのドキュメンタリー番組など、、、」と書きましたが、マンガ・アニメ・ドラマなどのフィクションはどうなのかというと、漁師を題材にしたものは、ここのところほとんど見られません。しかし、フィクションが世間のイメージに与える影響は大きいと思います。漁師の世界ってネタも沢山あり、フィクションの題材としても面白いと思うので、扱ってもらえるように、私としても様々な方と関わって働きかけていければと思っています。

18.1.6【コラム】魚のニュース解説 「2018年築地マグロ初競り」

この時期毎年恒例、築地のマグロ初競りですが、今年は築地最後の初競り(、、、って、色々な事情で3回目くらいの最後なんですが)ということで、いつになく盛り上がっております。

全国ネットのテレビ等のニュースでも必ずといっていい程、取り上げられていますが、今年、最高額のマグロを競り落としたのは仲卸の「やま幸」さん。3645万円での落札だったとのことです。

一方、毎年話題になる「すしざんまい」さんはどうだったかというと、190キロのマグロを3040万円で落札されたとのこと。

このことについて、新聞によっては連覇を逃すのように書かれていますが、キロ単価は最高なのと、もうこれだけ毎年メディアに出ていれば、1匹あたりが最高額でなくても全国メディアは取り上げる訳なんで、7連覇の意味ってそんなにないのかなと思います。

例年、1匹の最高額とキロ単価の最高額は、揃うことが多いのですが、今年は揃いませんでした。
両方とも大間産ですが、同じ海域でも個体差がありますし、必ずや大きいマグロが良いということもありません。
また、今年は入荷数量も多かったとのことです。

歴代最高額は、2013年の1億5540万円(222キロ、キロ単価70万円)ですが、ここまで開きが出るのも入荷数量が毎年変わることなどが起因しています。ちなみに、初競りの最高額については、全国ネットで取り上げられるため広告費込みと考えると少し見方も変わってきます。

いずれにせよ、初競りはそれまでの入荷が止まっていて需要が高まっている中で行われたり、メディアの注目もあったり、活気が増します。外部の目があると競る側も気合がのり、競り場が引き締まります。見学によるネガティブ面もあるので規制されることもありますが、こういったポジティブな面にも着目し、市場を作っていくとよいのではないかなと思います。

さて、今年も各シーズン毎に様々な海産物の初競りが行われていきますので、ぜひともご注目ください。

17.12.4【コラム】肉か魚かの論争に終止符を打とう

当サイトでは、魚に関するコラムも発信していきます。今回は、その第1回目。肉か魚かの論争に終止符を打とうという内容です。

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◎あなたは、肉派か、魚派か
魚に関して何か話す際に、必ずといっていい程対局として扱われるのが、牛、豚、鳥などの食肉です。同じ動物性のタンパク源だからなのでしょうか。

普段の会話でも「肉派か魚派か」という話にはたまになりますよね。最初に言っておくと、これって個人の好き好きでよいかと思います。ちなみに、自分の場合は圧倒的に魚派!、、、ということもなく、実はどちらでもないというのが本音です。

「肉が美味しい時は肉、魚が美味しい時は魚。それでいいのでは。」と思います。

では、肉が美味しい時、魚が美味しい時とはどんなときなのでしょうか。

◎肉の性質、魚の性質
まず、肉が美味しい時について考えてみましょう。なお、旅行先や特別なお店にいった場合でなく、普段の日常生活で考えます。
食肉の流通事情を考えると売られている肉の品質は比較的安定しています。これは、例えば、畜産により出荷時期をある程度コントロール出来たり、冷凍して品質を変えない流通も容易なためです。

対して、魚の品質はというと、逆に不安定です。これは、例えば、魚の生産が現在でも漁によるものが大方であること、生での流通も多いことが理由です。

ここまでをイメージでいうなら
・80点の品質をいつも提供できるのが肉
・90点の日もあれば、70点の日もあるのが魚

といったところです。(なお、あくまでもイメージの話ですよ。)

◎肉か魚かは、こう考えよう
ここまでのことを考慮すると、肉か魚かは、こう考えるのがよいと思います。

・肉か魚かは、その時々で良い方を選ぶ
・肉は日々の品質はあまり変わらないので、変化が激しい魚の状態を見る
・魚が良い時は魚を選ぶ、魚が良くない時は肉を選ぶ

先程のイメージで言うと、
・悪天候で魚の入荷がないときは、魚が70点なので、いつも80点の肉を食べる
・豊漁で良い魚が安く入荷したときは、魚が90点なので魚を食べる
といったところです。

魚の良し悪しの見分け方については、また別途書きたいと思いますが、分かりやすいところでは、大半の市場が休みとなる日曜、祝日、一部の水曜日は飲食店や小売店への魚の入荷は少なくなるので、魚の品質の点数は全体的に下がりがちです。

少し極端ですが、確率論的には「火・金・土は魚」「水・木・日は肉」を選ぶと良いとも言えます。

※ちなみに、月・木は、時間帯で違い、入荷があれば魚の状態はよいですが、ないと休市日よりも魚の状態は落ちるという状況なので、どちらともしていません。

◎肉と魚のコラボレーション
以上、肉か魚かについて、長々と書いてしまいましたが、肉と魚を合わせる手もあります。海外では、そのような料理も見受けられますし、魚は肉の味や栄養を補完します、その逆もしかりでしょう。

例えば、肉料理に魚の出汁を足すと料理のうま味が増すでしょう。自分がよくやるのは、肉を魚醤で漬け込む方法。肉が柔らかくなったり、うま味が増します。ちなみに魚醤は、こちらを使っています。

最後の一滴

自分としては、多くの方の食事がもっと美味しくなればいいと思っています。その手段の1つとして、魚という食材がもっと貢献できるようにしていければと思っています。